極楽記録

BGM制作受け付け中! BGM制作事業「キリカ工房」の主、ソロユニット「極楽蝶」の中の人、ユニット「キリカ」のギターとコンポーザー、弾き語りアーティスト、サポートギタリスト、編曲者のサエキの記録

自分のバンドが組めない、という話

 

かれこれ音楽活動は15年以上やっている。家で曲を作ってネットにアップしたり、気まぐれに弾き語りをしてみたり、バンドでギターを弾いたり、他諸々。

 

15年も音楽をやってきたわけだけれど、僕は一度も自分のバンドを作ったことがない。

一度だけ、若いころに自分がフロントマンになってバンドを作ろうとしたことがあった。が、デモ音源を作っている段階で自分的にかなり満足できるものが作れてしまった。どうしようか、と困ったものだった。「これじゃ、誰かとやる意味ないわ、全部自分で作った方が話が早いな」と思い、メンバー募集するまでに至らなかったことがあった。傲慢な話だけれど、今でもこういう瞬間ってあるんだわ。一人で作って一人で「ヤバい! 良いじゃん!」ってなるの。

 

メンバーを募集するのって、中々ハードルが高い。

自分がフロントマンとしてメンバーを集める場合、どのような音楽をやりたいのかをプレゼンしなければならない。音楽スタジオやら楽器屋、音楽専門学校周辺にゴロゴロいるはずの腕利きのプレイヤーたちに「このバンドに加入したい」と思わせなければならないわけ。フロントマンとしての責任とは、音楽性を指し示すことである。

そして、一度指針を決めたら、そこからブレることなく突き進む。これが中々難しい。世界観を変えずに自分たちの音楽をやり続けることの難しさというのは、本当に骨が折れる。例えば、同じ世界観で活動しつづけてきて、ついに「これだ!」という曲を作れたとする。自分たちが「最高傑作」と自負できる曲を作ってしまうと、今度はそれを超えることが一つの「壁」になってくる。

 

バンドっていうのは短命だ。下北沢や三軒茶屋にいるインディーのバンドの寿命っていうのはだいたい3年くらい。長くても5年以上。5年もやっていたら「すげぇ」ってなる。

それっていうのも、やっぱりこの「壁」の存在があるんじゃないかな、と思う。

ここでガラッっと方向転換ができれば良いのかもしれないけど、バンドってフロントマンだけのものでもないからね。大体のバンドはその「壁」を超えられずに終わる。

 

まあ、そんなレベルの高い話じゃなくても、例えば就職やら結婚やら引っ越しやらのライフイベントや、人間関係の悪化、恋愛関係のこじれ、売れないことで鬱屈していく精神などなど、バンド活動継続するのって壁が山ほどある。マジで5年も続けてたらすげぇのである。傍からみる以上に結構大変なことだ。

 

昨今は動画サイトなどの普及で、ネットにも楽曲発表の場が与えられるようになった。

楽曲制作も、DTMを駆使すれば一人で完結してしまう。全部ひとりでできるのである。

個人で予定を立てて好きに活動できるわけで、そうなってくるとバンドで活動していくことの効率の悪さが目立つようになる。

 

バンドっていうのはカネがかかる(スタジオ代、ライブノルマ、リリース費用諸々)。時間も使うし、メンバー間で予定も合わせなければならない。加えて、上記に挙げた「世界観」や「ライフイベント」、「人間関係の問題」もある。効率メチャ悪い。これを全部抱えてバンドのトップを背負って立つのは中々荷が重い。本当に、バンドを背負って立っているフロントマンの皆さんに対しては尊敬の念すら覚える著者である。

 

そんな理由で、僕は自分のバンドを組んだことがない。これからも、組むことは無いと思う。

 

それでも時々、バンドの一体感というものを恋しくなることはある。

誰かと一緒に演奏することの楽しさ、自分にはない引き出しを持っている人と気まぐれにセッションするときの発見や驚き。新曲を作ってるときなんかはとりわけ楽しい。みんなで「あーでもない、こーでもない、あれも良いし、これも良い」と言い合っているときなんかは「こういう瞬間があるからやめられない」とさえ思ったものだ(逆に何も出てこないときは地獄)。

 

「全部ひとりでやれるし」なんていう傲慢さが災いして、見逃してきたことも多々あると思う。自分のやり方ではあるが、また音楽を通じて人と向き合っていっても良いような気もする。時間も資金も限りがあるが、時には非効率なことも大事かもしれないと、今になって思う。