「ガメラ2」は90年代特撮映画の最高峰だ! 4K HDR版上映! 丸の内ピカデリーでその雄姿を観た!
常々思うのだけど、日本国民、皆繊細すぎやしないかと思う。
映画館で受けがいいのは「全米が泣いた」超大作だし、
みんな胸キュン恋愛ドラマが大好きだし、
「鬼滅、超泣いたよ!」が一つの自己アピールになっているきらいがあるし。
どうしちまったんだよ、日本国民よ! どうして皆、そんなに泣きたがる? 私は困惑しているのだ。
映画を観て「泣いた」と、誰かに報告することで「自分は繊細な人間なのです」っていうパーソナリティをアピールするのに皆必死な気がする。
「映画を観て泣いてしまうほど、感性豊かなんです」ということをアピールすることで、自分の人間性の豊かさを宣伝しているのかとすら思う。
確かに、感情的で情に脆い人間の方が他人からは好かれる。冷徹な人間は嫌われる。恐らく、上記のアピールをする人々はそれをわかっていてやってる。うすらサブい。ネタがわかる手品のよう。
それで、「感動ポルノ」なんていう言葉も生まれたりする。
「自分は良い人間である」ということをアピールするために、「映画」のみならず人や動物、その他諸々あらゆる手段を利用する。
みんながみんなそうではないとは思う。作品を見て、本当に心から泣いている人もいるだろう。でもさ、それを周囲にアピールする必要性が生じるのはなぜ?と私は思うわけである。
みんな、どうしちまったんだ?
鬼滅で泣いたという自称「繊細で感性豊かな」あなたよ!
繊細なあなたなら、ボロボロになりながらも立ち上がり続けるガメラの姿に涙するはずだ!
だって、頑張ってるぜ、ガメラ。地球のために。
さてさて、
前置きはこの辺にしておく。「ガメラ2レギオン襲来」の4K HDR版が丸の内ピカデリー「DOLBY CINEMA」にて再上映されている。あの名作特撮映画が迫力の音響とともに再上映される。
中学一年の時、父に連れられて観に行ったのを覚えている。「再上映」の一報を聞いて舞い上がった著者である。俺は映画を観て泣きたいんじゃねえ! 熱くなりたいんじゃ! うおお!
この映画、予告編が最高なのである。
『ガメラ2レギオン襲来』予告篇【4KHDR version】
お気づきの方も多いと思うが1:38辺りからの展開、「水曜どうでしょう」の予告編にそっくりである。「どうでしょう」ディレクターの藤村氏が本作の大ファンであり、この予告編をパロりまくっていたというわけ。ちなみに、北海道ロケのシーンでは「どうでしょう」出演者の鈴井氏、安田顕氏が出演。地下鉄のシーンで大泉氏が出演しているらしいのだけれど、殆ど映っていないし筆者も確認できていない。
上記予告編を観ていただければわかると思うが、本作の持ち味はその緊張感と切迫感である。
宇宙から隕石と共に飛来した巨大生物「レギオン」は、自らの生存のため札幌市に巣と草体を作る。突如現れた人間ほどの大きさの黒い虫のような群体レギオンは、地下鉄にいた市民を襲い、人々を恐怖と混乱に陥れる。
レギオンの作った草体は人体に悪影響が出るほど高濃度の酸素を発生させる。地球の生態系を変化させる宇宙生物。人類との共存は「不可能」である。
この展開! 本当に熱い! 敵に対して情緒の介入を許さないところがわかりやすい。
今回の敵として攻撃されるレギオンに対して「可哀そう」という感情は不要である。
「倒すしかない相手、倒さないと地球が危ない!我々人類が生き残れない」という構図!
観てるこっちとしては自衛隊とガメラの心境に迷うことなく全乗っかりできる!
うおお!
しかし、このレギオンがまためちゃめちゃ強い。
黒々とした群体がガメラの体にまとわりついて、その肉を食い荒らす。
親玉の白いレギオンは超強力な電磁バリアでガメラの火球を無効化し、ビーム砲も強力でガメラの甲羅の一部を砕いてしまうほどの威力を持つ。
レギオンによる首都襲来が決定的となり、ガメラという後ろ盾を失くした自衛隊は利根川に最終防衛ラインを引き、東北方面からやってくるレギオンを迎え撃つ。
これも分かりやすいよね! 防衛ライン! ここまで突破されたら負けっていう。
上記に挙げたレギオンのチート級の性質と、危機が迫る中迎え撃つという緊張感あふれるストーリー展開が極限状態を演出する。
かつてここまでストーリー的に整合性のとれた特撮作品があっただろうか。SF的な超兵器の登場はなく、唯一のSF設定は怪獣のみにとどめるという潔さ。派手な超兵器が登場しない分、絵としては地味になるが、それゆえにストーリー全体の緊迫感を産むことに成功している。
平成ガメラ三部作が登場するまでの「特撮怪獣モノ」というのは、超兵器が出てきたりとSF的な要素が多く、それはまあ楽しいものではあったのだけれど、ここまで緊張感を演出する作品はなかったと思う。
「特撮怪獣モノ」というのはSF的要素とリアリティの両立が非常に難しい。
SF的すぎると完全に現実離れした子供向けになるし、かといってリアルすぎると98年の「エメリッヒ版ゴジラ」のようになってしまう。「これが観たかったわけじゃないんだよな」っていう感じ。
その「現実」と「非現実」をバランスよく混ぜ合わせ、エンタメに昇華した本作「ガメラ2」は、90年代日本特撮の最高峰であることは疑いようのない事実である。実際、「平成ガメラ三部作」以降の「特撮怪獣モノ」の名作というのは「シン・ゴジラ」の登場を待たなければならなかったのだから。日本国民よ、もはや泣いている場合ではない。傷だらけになりながらも立ち上がり、戦い続けたガメラを観て、その心を震わせろ!