極楽記録

BGM制作受け付け中! BGM制作事業「キリカ工房」の主、ソロユニット「極楽蝶」の中の人、ユニット「キリカ」のギターとコンポーザー、弾き語りアーティスト、サポートギタリスト、編曲者のサエキの記録

「仮面ライダーBLACK SUN」。赤軍派闘争、日本のダークサイドを描く!

 

 

生物的なルックがカッコいい「BLACK SUN」。

 

先月には10話全て観終わっていた。その後、今に至るまでこの作品のことを時折考えている。個人的には久しぶりに興奮とバイオレンスを堪能できる良作だった。「お涙頂戴」の感動ポルノ作品が多い現代コンテンツの中で、ここまで暴力に振り切った作品は久しぶりだった。

 

この作品のことを語る前に、私のこと(主に政治思想など)を書くことにする。この作品を観た方ならお分かりいただけると思うけれど、今回の「BLACK SUN」は政治色があまりに強すぎる。観客各々が抱いている政治思想によって評価が激変するのである。

 

観ていない方のために最初に書いておくが、この「仮面ライダーBLACK SUN」は左翼映画である。仮面ライダーを使って赤軍派闘争をやってしまったわけだ。論争は織り込み済み、というわけ。

 

amazon」のレビューを参照すれば、保守派の方々が怒りまくっている。まあ、怒っているのは保守派の方々だけでなく、物語の構成や展開そのものを受け入れられなかった方々も数多いのだけれど…。

そんなこともあり、念のため私の政治思想を書いていこうと思う。

 

私は基本的に政治に関しては中立でありたいと思っている。右翼でも左翼でもなく、信仰している宗教もない。特定の団体に所属することが性に合わないのもあるのだけれど、こういうのは外から眺めている方が色々と興味深かったりする。それぞれの団体が信じているものは何か、どういう行動原理で動くのか、理屈で分析することの方に興味が湧いてしまう。今回私がこの作品を楽しめたのは、そういった自分の性質があったからだと思う。

 

物語は人間と「怪人」と呼ばれる人々が暮らす日本が舞台。この「怪人」というのが在日コリアンの暗喩であることは言うまでもない。その怪人を作り出した731部隊、当時の首相の家系、宗教団体に似た怪人側の権力者等など、この国が抱えているダークサイドを全て描き切っている。

思えば、私(現38歳)の子供時代は、日本の近代史を振り返ることはタブーだった。それこそ赤軍派闘争や731部隊新興宗教についての系譜などは学校では絶対教えてもらうことはなかった。そういったものに興味があった私は、自分で図書館などで調べていくしかなかったのである。調べていく過程で、いつも信じられないような事実にぶち当たったものだった。日本が以前、世界最大のテロリスト排出国であったこと、民間人を対象にしたテロを初めて行ったのが赤軍派であったこと(テルアビブ空港のヤツ)、731部隊の所業、統一教会岸信介云々。

 

そういった事柄が、なぜ義務教育に組み込まれないのかはよく理解している。

あまりにも内容がショッキング。知りたくないことも多々あったからだ。

 

けど、「BLACK SUN」はそれをやってしまったのである。描き切ってしまった。

本当に驚愕の連続だった。

 

「え! 731部隊やっちゃうの!」

「ちょっと待て、これ、山岳ベース事件じゃん!」

「おいおい、内ゲバしすぎだろ!」

「ああ、こんなの某世襲の政治家さんじゃん!」

「政治と宗教の関係描くの早すぎねぇか! 予言書かよ!」

 

鑑賞中の一か月間は本当にこの物語に圧倒されていたし、白状すれば、完全に心を奪われていた自分がいた。

 

もちろん、この物語が完璧なものだったとは言い難い。

まず、登場人物の行動理念がわかりづらい。キャラクター全員心変わりするのが早すぎる。

例えば、自分の身内を殺した原因を作った奴を、簡単に許すなど、人物の心境がわかりかねる部分がかなりある。

悪役を完全に「悪」としてしか描いていない点も、現代的とは言えない。これは、メッセージを伝えるために敢えて一面的にしか描かなかったのだろうけれど、悪役には悪役で、彼らが抱える事情というものがある。

序盤の戦闘シーンについても、予算不足が見てとれる。ハリウッド映画に慣れきった人間からしてみると、残念な描写が多々あったのも事実だ。でも、これは現場のスタッフのせいではなくて、日本映画業界全体が抱えている問題なのだろう。もっと予算あげてくれ…。仮面ライダーとかウルトラマンとかゴジラとか、日本最大級のフランチャイズが「金が無い」なんて、どう考えてもおかしいよ。

 

以上、色々と書いてきたものの、本作が私にとって大興奮の良作だったことは否めない。思想云々は別にして「ここまでタブーに踏み込んだ」「仮面ライダーを使って左翼闘争かよ!」という驚きは、近年では得られ難い感覚だった。

先にも述べたが感動ポルノばかりが流通する現代映画界で、ここまでやったのけたことには拍手を送りたい。

 

あと、最後に念のため書く。

暴力革命や闘争は、飽くまでフィクションの中だけ。私自身、それを肯定しているわけでも、赤軍派を支持しているわけでもありません。悪しからず。