平日の昼間なのに、館内はほぼ満員! ウルトラマンと並ぶ、日本を代表する一大コンテンツの一つである我らが仮面ライダー。上映前、心躍った筆者である。
初代「仮面ライダー」に関しては、私は子供の頃の夏休みに全話を一挙に鑑賞して夢中になった。前半のおどろおどろしく、サスペンス風味の展開から、後半の二号ライダー参戦、ネオショッカーの台頭によるバラエティ豊かな展開に胸が躍ったのを覚えている。さて、シンウルトラマンを経て今回はシン仮面ライダーである。どんな戦いを見せてくれるのか!
感想を書く前に、軽く私の「仮面ライダー観」を書いておく。
私が思う「仮面ライダー」というのは、主に昭和ライダーのことである。平成以降は先日の「BLACK SUN」以外は未見。とりわけフェイバリットなライダーは一号二号、V3、Xライダー、BLACK、RXである。令和の今、ライダーたちがどんな環境で戦っているのかは全くもって不明だが、私が影響を受けた昭和期のライダーというのは「荒唐無稽」の一言だった。
ショッカーという組織は、あんなにも科学者が山ほどいるし設備も整っているのに、誘拐のために使用する車が練馬ナンバーだったりする。わざわざ車検通してんのよ。誘拐、殺人、人体実験の悪事の数々をこなす悪の組織がさ。車検通しに行ってんのよ。笑うよそんなの。
デストロンという組織は、自分の敵であるライダーV3に年賀状を送ってたりする。アジトわかってんだから強襲すりゃ良いものを。
BLACKの敵組織、ゴルゴムはある日、町中に流通しているマグロを全て買い占めてしまう。なんか、よく覚えてないけど、マグロに含まれているエキスが欲しかったんじゃなかったかな。
そんな感じで、悪の組織の手先である怪人はいつもライダーの住まい近所の喫茶店周辺で悪事を働き、ライダーに見つかり、どこかの採石場や工場跡地で蹴られて爆散する。毎度殆どこれの繰り返し。
同世代のヒーロー「ウルトラマン」と比べたら、だいぶメッセージ性が薄く、エンタメに振り切りまくっていたり、設定上の詰めの甘さが目立ったり、もう面白くて仕方ない。
でも、そんな荒唐無稽さを全て落とし込める「コンテンツとしての強さ」が、ライダーにはあるのだ。第一、考えてみれば「ライダー」のルックも可笑しい。バッタをモチーフにした目の大きい被り物である。今まで見慣れすぎて気が付かなかったけど、よく見たら面白可笑しい見た目だ。それが正義のヒーローとして、詰めの甘すぎる組織と戦う。
考えてみたら変な話なんだけど、それこそが魅力なわけである。
で、シン仮面ライダーの話である。
色々と、すんなりと受け入れられにくい部分は多々ある。まずは登場人物たちの実在感の無さ。
庵野監督がそもそもアニメーション作品の監督なのもあり、どうも毎回登場人物が戯画化されていてマンガチックで、実写でやると不自然さが残る。とりわけ、緑川ルリ子に関してはどうしても「エヴァンゲリオン」のアスカを想起させられる。
キャラクターたちの行動理念や動機についても、もう少し深堀が必要と感じる。
あとは、CGについて。これはシンウルトラマンの時も感じたことだが、どうしてもチープに感じる。仕方ないのはわかっている。予算がないのだから。現場の方々のせいではないし、日本映画に関してはそれでも十分すぎるくらい健闘していらっしゃるのがわかる。
蝙蝠オーグとの戦闘も、やはりチープに感じる。敵が「ヒャッハー!」って高笑いする描写も、そろそろいかがなものかと思う。わかりやすいとはいえ、ちょっと幼稚にすら感じる。
で、上記した内容は全部愚痴なんだけど、
全部、全部チャラ!!
何も問題無いです!
だってこれ、ライダーじゃん! 荒唐無稽、目立つ粗さ! 全部オッケー!
そうやってライダーは、昭和の時代から今にいたるまでそうやって物語を紡いできたんだよ!
「キャラクターの表現が云々」とか「ストーリーの深みが云々」という映画的な批評っていうのは、ライダーにはほぼ通用しない。だって、そういうコンテンツじゃないから。
ライダーが敵を殴る蹴る、投げ飛ばす! 大事なのはそれを見て、あなたが熱くなれたかどうかなのである。
粗削り、オッケー!
深みが無い、オッケー!
詰めが甘い、それも良し!
それこそがライダーなのだ! われらがライダー、ここにあり!
そんな中でも、感動した箇所もいくつもあった。
ショッカーという組織の新解釈(AI的な解釈)も、テレビ版でもすでに似たような組織であったため違和感はない。そう考えると、ショッカーっていう組織は時代の先を行ってたよね。
役者たちが演じる泥臭い戦闘シーンも、やはりテレビ版をよく踏襲されていることがよく分かった。飛んだり跳ねたり回ったり、「ああ、ケガしそう!」って毎回観ててハラハラするんですよね。
ロケ撮影の荘厳さ、カメラアングルの絵作りにも感動させられた。とりわけ、ドローン空撮で見るライダーの世界は真新しさを覚えた。ライダーの伝統はやはりロケ撮影なのだ。奥多摩やダム、富士山の麓、鉄道レール、トンネル、海を渡る橋など、絶景の中にいるライダーはそれだけで絵になる。
あとは、庵野監督の作家性も、久しぶりに垣間見れたことも大きかった。
本郷猛の朴訥な話し方や、服を着替えないので体臭がする描写などを見れば、この主人公が監督自身の投影であることはすぐにわかる。そして、終盤に明かされる父との関係性や母に対する思い、「人の気持ちがわからない」というエヴァから描かれてきた心の問題も、再度提示される。恐らく庵野監督は、これかもずっとこれらの命題を元に作品を作り続けるのだろう。ゴッホがひまわりの絵を描き続けたように。
以上、シン仮面ライダーについて書いてみた。
色々ヘンテコな世界ではあるが、それこそがライダー!
ぜひ劇場へ! ご期待ください!