赤い季節を抜けて
チバユウスケ氏の訃報が世に出てから、落ち着かない気持ちでいる。
ミッシェル・ガン・エレファントのアルバムは全て持っているし、ROSSOの映像作品「muddy diamond sessions」は今でも時折観たくなって再生するし、THE BIRTH DAYが「STAR BLOWS」というアルバムを出した時にはライブにも行った。今でもアルバムが出れば思い出したように購入し、移動時間などで聴いていた。多感だった10代から現在に至るまで、変わらず私に刺激をくれる存在。それがチバユウスケ氏だった。
今年の5月頃に咽頭がんのため闘病中であることが伝えられた際、私は無意識に「このことはあまり考えないようにしよう」と思った。私は普段、介護士として施設に勤務しており、勤務している中で、がん治療をしている方々の介護をしたことが何回かある。SNS上では「チバががんなんかに負けるわけがない」と書いているファンの方が多くいらっしゃったし、自分もそうであってほしいと願っていた。そんな風に記したファンの方々だって、祈るような気持ちで記したに違いない。チバさんは、必ず帰ってくる、ステージに帰ってきて「もう大丈夫」と言って、グレッチを引っ提げて笑ってるはずだと。
反面、あまり楽観的になれない自分もいた。人の命を、執拗なまでに追い詰めていく病気、それががんだ。介護の仕事上、悲観的なことに関しては無意識に心のシャッターを閉める癖がついている。「これ以上は心で受け止めない、頭で受け止める」。冷静に、客観的に、妙な邪推や希望的な憶測もせず、続報を待つ。
待っている続報が来ないことに違和感を覚えながら、12月5日の訃報を聞いた。
頭ではわかっていた。氏の状況が芳しくないことは、5月以降に続報が出ないことが物語っていた。そして、ある程度の心の準備をしていたつもりだった。
それでも、やっぱり心は嘘をつけない。次の日の朝目が覚めて「チバがもういない」と思うと気分が重くなった。昨日は夜勤業務中のふとした時に涙が出た。
がんという病気の執拗さ、それと戦い続けたチバユウスケ氏。
病床で闘病していたであろうチバ氏のことを考えると、心が痛む。がんとの闘いは言うに及ばず壮絶だ。というか、がんに限らず人があの世に旅立っていく様というのは壮絶だ。全くもってきれいなものではない。それでも、チバ氏は戦い抜いた。
正直やりきれないし、全然心の整理がつかないけれど、今はただ「お疲れ様でした」と天に向かって手を合わせたい。
"どうやら闇の時代は終わったみたいだ
乾いた空にそんな感じがするんだ
きっとあいつもそう言うぜ teddy boy"
痛みのある体から解放されて、今頃またギター弾いて歌ってるかな。
アベさんと二人で。