ボカコレに参加。皆さま試聴ありがとうございました。楽曲「daybreak」について。
この度私は、ニコニコ動画にてボカロPとしてデビューしました。
アカウント名は「極楽蝶」。ニコニコ動画で開催されていたボーカロイドイベント「ボカコレ2020」に参加しました。
曲名は「daybreak」。「夜明け」という意味。
イラストは義理の弟君に外注した。彼も良い仕事をしてくれましたな。
実はこの曲、今年の8月頃には完成していて、出し惜しみをしていた。アルバムの最後に来る曲のように感じたので、まずは数曲作ってまとめなければ、と思っていた。
他の曲も「作らなきゃ」と思ってはいたが、依頼仕事を優先的に行っているうちに後手に回っている。いつか必ず初音ミクでアルバムを作りたい。
「daybreak」という曲について書く。
イメージは深夜。受験勉強に苦しみながら過ごした夜を思い出しながら作った。
イントロは、当時買ったばかりだったジャズマスター。鈴のような音色だ。
サビの「いくつかの偶然が」という言葉は、心理学者の河合準雄さんの言葉から着想を得た。河合さんは生前、うつ病などの精神疾患から回復するには「偶然を待つしかない」という旨の発言をされていた。思いがけないきっかけで、人は立ち直っていく。そういうものらしい。
もう一つ、9年前の震災の折に宮城県石巻市に災害ボランティアに参加した際の出来事に着想を得た。
被災者の方のこんな言葉を聞いた。
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津波が来た時、たくさんの助けを呼ぶ叫び声を聞いた。いくつかの声は津波と風の轟音にかき消されてしまった。真っ黒に押し寄せる津波の中、自分も必死で家の柱にしがみついていた。
今でも夜になると、毎晩そのときのことを夢に見る。あまりにも多くのものを失ってしまった。
目が覚めても、自分の住んでいた家や町はヘドロとゴミで真っ黒で、夜眠っていても津波の真っ黒な夢を見る。寝ても覚めても黒いままだ。未来のことを考えても真っ暗な未来しか考えられない。
ただ、ボランティアの人々が来るようになってから、自分の家と町が少しずつ綺麗になっていっている。日に日にヘドロやゴミが片付いていっているのがわかる。
だから、未来が暗いというならば、もうそんなものは見ないことにした。
少しだけ明るくなって来た、今を見ていこうと思う。
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その人の言葉を聞いてから今まで、僕はこの言葉に何度助けられたかわからない。少し気が滅入ったときにこの言葉を思い出して、そのたびに顔を上に挙げることができた。
辛い経験をされたその人の言葉には、そんな力があった。言葉には力があると、その時改めて強く感じた。
勿論、誰だって嫌な思いはしたくないし、その人だって好きで辛い経験をされたわけじゃない。でも、心に傷を負ったその人が、暗闇の中で見つけた言葉には、人を立ち直らせる力があったのだ。
昨今はコロナ禍で、9年前の震災とは別の形の災害が続いている。
自殺の報道も数多い。人生に悲観する人たちが数多くいるし、その気持ちもよくわかる。
人生に意味なんて無い。ただ生まれて、そして朽ちていくだけだ。でも、私たちはそれでも人生に「理由」や「意味」を見出そうとする。「理由」や「意味」がないと生きられないくらい、私たちの心は弱いのだ。
そして、心が弱っているときは尚更、その「理由」や「意味」を見失う。残るのは彼岸への憧れだけだ。
ただ、もしこの曲やこの文章が、そんな傷ついた誰かの目に留まるなら、もう一度だけ考えてほしいと思う。傷ついたあなたの言葉は、同じ傷を負った誰かを救えるかもしれないからだ。
少しだけ踏みとどまってほしい。傷ついた誰かに、あなたの言葉を届ける。それがあなたの生きるための「理由」や「意味」にもなるかもしれない。
傷ついた誰かに、言葉を届ける。
その「夜明け」を、我々は目指すのだ。