audiostockにて新曲をアップしました! 朝をイメージしたアコースティックギターインスト
標題の件です。下記は試聴用埋め込み。
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去年行った身延旅行からインスパイアされて作った。
身延の朝、雨上がりの日差しの中でイメージが湧いた。アコギとピアノ、ストリングスの音が頭の中で鳴り出したのを覚えている。
ストリングスは奥が深い。先ほども、妻と二人で久石譲の曲を聴いていたのだけれど、ストリングスやオーケストラは人間が作った発明だと思う。予算が無くて解散してしまう楽団が沢山あるが、後世に残さなければならない遺産でもあると思う。
と、話が飛んだ。
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今回の曲は、楽曲制作事業所「キリカ工房」にて制作いたしました!
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「気候変動シンガーソングライター」曲紹介 私が思うに現時点での最高傑作!「静かな力」について。
さて、本日も「森のシンガーソングライター証」さんのニューアルバム「気候変動シンガーソングライター」の曲紹介をしていくこととする。
今回のアルバム、本当に名曲揃いで、どの曲がトリを飾るのか、全く予想ができなかった。証氏のソングライティングの力量や、ボーカルの安定感もさることながら、他にもピアノやコーラスなど様々なアーティストの方々の才能が集結、見事に調和している。まさに「多様性に富んだ楽曲集」である。SDGsを体現する楽曲群。
曲ごとに様々な顔を見せてくれる、個性豊かな、虹色の楽曲たち。
多くの人々に聞いていただきたいと切に願う。
さて、今回は「気候変動シンガーソングライター」収録曲、「静かな力」について。
上記動画は、制作中のものです。
この曲は、かなり早い段階で素材が出そろっていた。10月の中旬には証氏のボーカル、ギターの他にコーラスの菊池早秋さんの素材が私の元に届けられていたはずだ。
届けられた素材をDAW上に並べた時から、「ああ、いきなり名曲が来ちゃったわ」と思わず笑みがこぼれてしまった著者である。アコースティックギターと声のみで構成された音源を聞いて、他に必要な音が全て、自分の頭の中で自動的に鳴り出した。
「必ず名作になる」という確信があったし、作業自体も楽しいものになるはずだとわかっていたので、「この曲の作業は、一番最後にとっておこう」と思っていた。
何せ、今回はあと8曲分作業しなければならない。時間も掛かるだろうし、全ての楽曲の制作を終えるまでモチベーションを維持し続けなければならない。最後のお楽しみは必要だ。
そう思っていたのだけれど、他の楽曲の素材が中々集まらない。10月の半ばの時点で3曲分くらいしか届いてなかったように思う。証氏に「作業が遅い」と思われても良いことは無いので、早々と作業を開始することとなった。
しかし、制作中のものを聴いていても、もうすでに完成している。
証氏、コーラスの菊池さん、私の三者のそれぞれの「持ち味」が見事に融合している。
自分としても、一番の得意技が披露できたと思っている。きらびやかなクリーントーンと、轟音ギターとのコントラスト。躍動感のある楽曲展開。
アルバム中最高傑作の自負がある。
この歌は、日常を生きる「普通の人々」のための歌だ。
特に代わり映えのない日常、楽しいことよりも、空虚なことの方が多いかもしれない。
苦しい時の方が多いのかもしれない。
そんな日々を辛抱強く生きている、私たちのための歌だ。
皆さまの手元に、この歌が届けばと思います。
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今回の編曲作業は、楽曲制作事業所「キリカ工房」にて承りました!
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映画「ザバットマン」、DC映画の原点回帰! ネタバレなし。皆、映画館へ走れ!
大当たり!!
個人的にはこの5年間でトップテンクラスの、最高に楽しい映画だった。
バットマン映画と言えば、ノーラン監督の「ダークナイトトリロジー」という大ヒット作品があり、制作側としても観る側としても「あれを越えられるの?」という不安が付きまとうものだが、そんなものは杞憂に過ぎなかった。
ダークさと重厚さ、孤独なヒーローの悲哀はより深みを増しており、撮影アングルやカット割りはホラー映画の手法そのままだ。特に、冒頭のリドラー初登場シーンの「特に何の効果もないけど、怖いものがしれっと映っている」感じは近年のホラー、サイコスリラー映画によくある手法である。
実写版においてはバートン監督「バットマン」から「ダークヒーロー」として描かれることがテンプレとなったバットマンだが、そのダークさはついにホラーの域にまで達している。
そして、ダークナイトと決定的に違うのは、今回の「ザバットマン」が「サイコスリラー映画」であること。
この物語において、犯人リドラーを追うバットマンとジェームス・ゴードンはストーリー上の狂言回しに過ぎない。白人と黒人のコンビがサイコ犯の「なぞなぞ」を追い、結果的に犯人の思惑を達成させてしまう。
そうだった、DCというのは、、
"detective comics"の略。
つまり、「探偵漫画」だ。
娯楽大作として心底楽しい「ダークナイトトリロジー」との差別化のため、今回の作り手は原点回帰を果たしたのだ。「ダークさの深化」と「原点回帰」という二種をブレンドし、先の娯楽大作と全く別物の、重厚なスリラー映画を作り出してしまったわけである。恐れ入った。すげぇ!
そんなわけで、今回の「ザバットマン」は、アクション満載のマーベルヒーロー映画や、先から述べている娯楽大作「ダークナイトトリロジー」と同じものを期待すると、「ただの暗くて長いだけの映画」と肩透かしを食らうだろう。
もちろん、バッツ映画おなじみの「大迫力バットモービルカーチェイス」や、ラストにはこれまたお決まり「行けぇバッツ! やっちまえぇ!」の大乱闘シーンは用意されている。が、アクションはあくまで従来のファンたちのための「すごい豪華なおまけ」として考えるべき映画だと思う。何せ、アクション以外でも語られるべき要素がかなり多い。
今回、イマイチ乗り切れなかったという方は、そういったアクションやガジェットを期待されていた方々なのかも、と個人的には思う。
以下に、私が個人的に「これ好きだ!」と思ったストーリーや設定について書いていく。
ブルース・ウェインについて
今回のバットマン=ブルース・ウェインは、ヴィジランテ活動を始めて2年目の若き青年。ノーラン監督映画「テネット」でも鮮烈な印象を残したロバート・パティンソンが主演を務める。社交性に乏しく、繊細なブルース・ウェインの姿を好演している。
眠らずに夜な夜な自警活動に身を投じ、傷だらけになって帰ってくるという、ある意味では自傷行為ともいえるような行動を繰り返す、不安定な心を持つ青年。言わずもがな、年中雨が降り続いているゴッサムシティは、彼の心象風景そのものだ。
こんな繊細なブルース、観たことない! ブルース・ウェインと言えば大富豪、プレイボーイ、強靭な肉体と格闘術を有する「マッチョイムズ」の権化である。
現代のアメリカにおいて、こういった繊細なヒーローが現れたのは、一つの時代風潮と考えても良いのではないだろうか。
アメリカ的「マッチョイムズ」に疲れている人々が、新しいヒーローとしてパティンソン版ブルースを作り出したのかもしれない、と個人的には考察している。
「ダークナイトトリロジー」では「人は這いあがるために墜ちる」というのがテーマとしてあった。今回の「ザバットマン」でのブルースは、這い上がることさえ辞め、ひたすら暗がりの中に閉じこもり続ける。
時代の気分、と言えば、言えなくもないよね。アメリカ、最近元気無いし。
そして、トレーラーにもBGMとして流されているニルヴァーナの「something in the way」の起用。
この曲も、作品全体を漂う重い空気感を見事に表現している。
"something in the way"
「何か引っかかる」「なんだかすっきりしない」
リドラーの出す"なぞなぞ"に対しての気分だったり、公務員たちの汚職にまみれたゴッサムシティの腐敗に対してだったり。
そんな「すっきりしない気分」をアコースティックギターのシンプルな響きがより一層重苦しさを演出する。
そして、近年のヒーロー映画における定番テーマ「ヒーロー相対化」について(ヒーローって、本当に正しいの?という問い)もちゃんと用意されている。
それに対する回答も、もう言うことなし。
他にも、リドラーのルックの「ワークマンで揃えました!」感や、SNS社会の犯行手法(リドラーのフォロワー500人という絶妙さ!)、ペンギンの小物感(初期のコミック版の雰囲気に近くて良いよね)、時折登場するゴシック建築の荘厳さや、あとは地味なところで「ネズミ拷問装置」(「1984年」じゃん!)等など、見所満載。
上映時間3時間、全く長いと思わなかった。とにかくお腹いっぱい。
ダークで内省的、そして繊細という新しいバットマン。
新時代のヒーローは、人を殴るだけじゃなかった! 次回作も大いに期待!
気候変動シンガーソングライター曲紹介 「ガイアポップ」について。
さて、ここからは少し自分の制作過程についての話をしようと思う。
証さんから制作開始の「ゴーサイン」が出たのが去年の9月、ギターと歌の音源データが届き始めたのが10月。制作終了が今年の2月。制作期間に5か月ほど使った、ということになる。これは証さんのアルバム制作に於いては最長期間だ。気が付けば長かった。ほえぇ…。
それもそのはず、まず単純な話今までよりも曲が多い(いつもは多くて5曲だが、今回は9曲!)。関わっている演奏者やボーカリストは私以外にも数名様いらっしゃる。皆さまご都合というものもあるため、素材が集まるのも時間が掛かる。
5か月間、私も身延へ旅行に行ったり、カラオケ音源の依頼を受けたり、ワクチンの副反応で高熱が出たり、他の業務や事業など色々とあった。でも、手が空いた時はいつもこのアルバムのことを考えていた。
休日はギターとキーボードとPCを前に、「これはどうかな? あれはどうだろう?」とワクワク考える日々。
5か月間、私にとっても大きな実りある時間だった。証さんには感謝ですな。
時間をかけた分、良いものができたという自負がある。繰り返すようだが、やはり今までで最高傑作だ。現時点でできることは全てできた。作品作りはいつだって総力戦だが、今回もまた然り。
本当なら全曲紹介したいところだが、生憎時間も限られているため、特別私が思い入れのある曲について記していくことにする。
ガイアポップ
上記動画は制作中のものです。
まず、証氏のアコースティックギターの音の迫力に驚かされた。イントロからいきなり「ジャン!」と鳴らされる音に圧倒された。本来なら少し調整すべきなのかもしれないが、歌詞の考慮してそのまま採用した。
「ガイアポップ」、タイトルに「ポップ」と付いているが、この曲の証氏のアコースティックギターには独特の切迫感と緊張感がある。
それもそのはず。歌詞を見れば、その緊張感と切迫感の意味がお分かりいただけるだろう。
この歌の歌詞に出てくる「君」について、考えながら音を加えていった。
「君」は、いつも不安にさらされている。
否定された体験や、誰にも頼れない恐怖。そういったものが、彼を苦しめる。
閉じこもってイメージするのは「本当に行きたい世界」
そんな彼のことを、森の木や風が励まし続ける。
そして、彼がどんな心境の中にいたとしても、夕日はいつだって綺麗なままだ。
自然は、いつだって変わらない。誰に対しても、何に対しても平等だ。
悲痛な中にも、美しさと力強さを秘めた歌だ。
私が加えたのは、風をイメージしたギターのノイズ、「夕暮れの帰り道」を連想させるギターソロ。サビで鳴らされる、段々と降りてくるピアノ。
パーカッションもシンプルにまとめた。証さんのライブを見たことのある方なら、聞きなじみのある雰囲気だと思う。実際、そういう雰囲気を狙って仕上げてみた。
まずは一曲紹介。他はまたお時間のある際に。
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「気候変動シンガーソングライター」曲紹介 「プラネットソング」について。
さて、本日も森のシンガーソングライター証さんのニューアルバム「気候変動シンガーソングライター」の曲紹介をしていく。
今回の証氏のアルバムにて、私サエキカツミはギタリスト、プログラミング、サウンドデザイナーとして参加させて頂いた。
依頼仕事というのは、いつも「今よりちょっと上のレベルの課題を乗り越えていく作業」の連続だ。まだまだ興味は尽きないし、やるべきことも多い。楽しんで乗り越えられればと思う。
さて、今回は証さんのニューアルバム「気候変動シンガーソングライター」収録
「プラネットソング」について。
今回のアルバムの中でも有数のメッセージソング。
メッセージソングだけれど、押しつけがましさがなく、軽快に楽しく聴かせてくれる。証さんのソングライティング力に脱帽である。
「地球をまもろう」
「僕は変わりたい」
「家族のように、この地球の資源を皆で分け合うんだ」
皆で歌いながら手を叩いたり、踊ったりしながら笑顔になれる曲だ。ライブで演奏するときは楽しいだろうな。
アレンジについて。
この曲は、自分でも「よく化けたな!」と驚いた曲。
正直に書くと、この曲の作業に取り掛かる前、アイディアが尽きかけていた。早い話、ネタ切れである。
作業そのものが中盤を越えて折り返し地点だったことも関係していたと思う。
「さて、どうしたものか」と頭を抱えていた時期だった。
こういう時は原点回帰、「森」を意識しよう!と私は考えた。
以前、証氏と私は他の演奏者の方々と「森の音楽隊」やら「森バンド」なるもの(「家を建てる、っていう名前のバンド」)を結成して、演奏活動をしていたことがある。
あの時のイメージだ! あれで行くぞ!
森バンド、最高じゃないか! まだバンドっぽい曲は作っていないし!
ユリイカ(我、発見せり)!
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こんなことを仕事終わりの深夜2時ころに、作業机の前で一人思いついて、眠れない夜がさらに眠れなくなる著者である。世話が焼ける。
そんなわけで、ギター、ドラム、ベースを軸にしたバンドサウンドをベースに、サビにストリングスと、森のバンドらしく木琴のリフレインを加えることで完成した。
ストリングスは奥が深い。主旋律と副旋律の絡め方を考えるのが、私は好きだ。オーケストラが演奏する映画音楽も大好きだ。だからと言って、オーケストラ楽曲を作れるわけではないけれど。。。
今回のストリングスは、自分史上かなり上手くできたと思っている。感動的、って自分で言うのは変かもしれないけれど、それくらい自信がある。特に後半は荘厳である。
それもそのはず。
去年は色々と依頼を受けて作業した関係で、ストリングスについて新たな発見をさせてもらえたからである。とりわけ、superflyさんの「愛をこめて花束を」のカラオケを作らせて頂いた際は、ポップソングにおけるストリングスの上手な聞かせ方の片鱗を見た気がした。
やはり、依頼仕事というのは前述したとおり「今よりちょっと上のレベルの課題を乗り越えていく作業」の連続なのだ。
依頼をとおして私も色々と学ばせていただいている。
これからも、まだまだ勉強していきたい。
森のシンガーソングライター証さんのニューアルバム「気候変動シンガーソングライター」。大好評発売中です!
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森のシンガーソングライター証さんのニューアルバム制作に参加しました!
とうとう発売されました、森のシンガーソングライター証さんのニューアルバム「気候変動シンガーソングライター」!
私、サエキカツミは当アルバムにてギタリスト、プログラミング、サウンドデザイナーとして参加させて頂きました。
余談を許さない気候変動に際して、アーティストとしての私たちができること.
それは、、、
「作品を作り、それを通して考えを広めていくこと」
「難しい問題を、自分たちなりに噛み砕いて、皆にわかりやすく提示してみせること」
この二つであると、私は考えます。
「気候変動」と一口に言ってしまうと、それは国家や企業が結託して取り組むべき大きな課題ではありますが、大きすぎるが故に、私たち市井の生活者には縁遠いものと感じてしまいがちです。
そんな「気候変動」という一見大きく見える問題を、証さんは、日常を過ごす一人の生活者としての目線で歌い、私たちに問いかけます。
子供を持つ父親として、歌唄いとして、自然に魅了された「森の人」として。
「気候変動は、決して縁遠い問題ではない」
「私たちの子供たちに関わる問題だ」
「一人の生活者として、できることがあるはず」
「気にしなければならない事柄がいくつもある」
このアルバムに収録された名曲たちを聴いていると、そういったことに気づかされます。
「何もできない」から「何ならできるだろう?」へ。
珠玉の名曲たちが収められたこのアルバム、まさに最高傑作。そんなアルバムに微力ながら携われたことに、感謝します。
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「マトリックス レザレクションズ」が描いた「現実」。ラナ・ウォシャウスキーがつけた「落とし前」とは?
遅まきながら、昨日1月15日に鑑賞。鑑賞後は正直「お通夜ムード」だった著者である。10代のころ、頭をブン殴られるような衝撃を与えてくれた伝説の作品が、ただの「ハリウッドSFアクション」に成り下がってしまったような気がした。哲学的示唆に富んだ第一作、ディストピア的SF世界観にヤラレた第二作、絶望と共に幕を閉じた第三作、全てに通じていたのは切迫感と緊張感、クールさだ。
本作にはそれらすべてが薄まっていた。
謎のない解りやすいストーリー、SF要素も予想の範疇を出ない、全体的にコミカルな印象を持たせる展開。時折挿入される過去作映像に関しても「ああ、もうあのころのスケールの感動は訪れないのだろうな」と、寂しさを感じたものだった。
2年後にテレ東の「午後のロードショー」で放送しているだろうな、なんて思ってしまった。
でも、今冷静になって考えてみると、これは「意識のアップデート」ができていない私自身の問題もすごくあるような気がしてきたので、少し頭を整理していくことにする。
まずは、映画本編以外の話を書く。ネタバレしてしまうので詳細は省くが、本作の前半は、今流行りの「メタ構造」となっている。「マトリックス」原作者の監督ラナ・ウォシャウスキーの「マトリックスシリーズ」に対する心境が吐露されている。
毎年のようにワーナーから「マトリックスの新作を作れ」と伝えられ、その度に「ノー」を言い続けてきたウォシャウスキー姉妹。しびれを切らしたワーナーは、「原作者抜きの新たな『マトリックスシリーズ』を制作する」計画も考慮しだす始末。
ある日、親友と両親を立て続けに亡くしたラナは、失意の中で、自身の心の中にいるネオとトリニティがいることに気づく。傷ついた彼女の心を癒したのは、彼女自身が作り出した実在しないキャラクターたちだった。
以上が、本作の制作を決意したラナの、公式に発表されている経緯である。映画の広報のために、幾らか盛った部分もあるかもしれないが、仮にそうであったとしても、ワーナーに自分の作品を売り渡さなかったラナの心意気には「あっぱれ」という他はない。
そして、映画の前半から中盤にかけて描かれる主人公:トーマス・アンダーソンの、周囲を取り巻く環境や「新作を作れ」と言われてストレスを感じまくる描写は、言うに及ばず作者ラナ自身の本音であり、映画業界に対する風刺だ。
恐らく、彼女は「マトリックス」という最大の担保を使って、「この際言いたいこと全部言っちゃう!」という覚悟を決めたのだろう。かつてはトランスジェンダーであったラナ。性別適合手術を経て女性となり、直面することとなった「女性に対する社会の抑圧」に対して、新たに「覚醒して戦う」物語を作る必要があったのだ。
言うに及ばず、「マトリックス」という伝説的な作品はアメリカ社会に大きな影響を与えた。「救世主が世界を救う」という筋書きを曲解され、Qアノンをはじめとする陰謀論者たちに利用され続け、今日におけるアメリカの混乱を助長している。そんな現状に一番心を痛めていたのは、ほかならぬ原作者本人だろう。
自分が作り出した作品が世界を変えてしまった。
その影響、すべてに落とし前をつける。
その上で、これからの世界はどうなるべきなのかを提示する。
それらの作者の思いが作品を通じて、観ている我々に「意識をアップデートしろ!」というメッセージを叩きつける。そうか、多様性の時代か。例えば「女は結婚して家庭を持って、家族のために滅私奉公する」という、「普通」という旧態依然とした価値観がどれほどの人間を抑圧するのか。
我々が新たに覚醒して戦うべき相手は、そういった「普通」という名の抑圧なのだ。
私が考えているよりも、そういった抑圧に苦しんでいる方々は多いのだろう。増して、昨年「ブラック・ライブズ・マター運動」や「Qアノン」などで激動に揺れまくったアメリカ国内に於いては、「多様性」っていう言葉には切迫感がある。日本に住んでいる我々が感じているものとは比ではないだろう。
世界の価値観が大きく変わろうとしている今、この辺りの意識のアップデートを私もしなければならないなと感じ、反省する次第だ。